MBOを行った取締役への責任追及

MBOを行った取締役への責任追及

 
前回、MBOに関する取得価格決定申立事件に関しての話をしましたので、その流れを受けて今回もMBO関連の話をしたいと思います。
 今回の話は、MBOに関する取得価格決定申立事件の決定が出た後の話です。
取得価格の決定を申立てた株主は、自分達が望む価格に近い「公正な価格」が決定されたことで喜んでいる一方、この決定によって自分は損をしていると思う者がいます。それは、TOB価格でTOBに応じた元株主達です。
そして、TOB価格で売却した元株主が、自分達が損をしている差額分を求めて、会社の取締役らに対し、損害賠償請求事件を起こしました。
つまり、MBOの取得価格決定申立事件によって決定された株式の「適正な価格」がTOB価格よりも高かったため、TOB価格で株を売却した元株主は、「適正な価格」とTOB価格の差額分の損害を被ったとして、会社の取締役に対し、その差額分の支払を求めて損害賠償請求を求めたのです。
 このような内容の事件に関して、平成23年2月18日に、東京地方裁判所が判決を下しています。
 裁判所の判断内容は、おおまかには以下のような内容です。
まず、そもそも取締役は、企業価値の向上を通じて、株主の共同利益を図ることが目的となるから、取締役は、株主の共同利益に配慮する義務を負っていると判断しました。
裁判所は、これに続き、この義務違反があるか否かは、当該MBOの交渉における当該取締役の果たした役割の程度、利益相反関係の有無またはその程度、その利益相反関係を回避あるいは解消するためにどのような措置がとられているかなどを総合して判断すべきとしました。
そして、当該事案においては取締役には義務違反がないとして、株主の損害賠償請求を退けています。
この裁判例から分かるように、「公正な価格」がTOB価格よりも高いという決定がなされたとしても、ただちに取締役にその差額分の損害を賠償する義務はないということです。
また、取締役は、MBOの当時、利益相反関係の回避ないし解消措置を真摯に行っていたのであれば、その後のMBOの取得価格決定申立事件の帰結には左右されず、かつ、損害賠償責任を負う可能性は低いということが伺えます。
この裁判例では、具体的にどのような行動をすれば損害賠償責任を負わないのかについては明らかになっていませんので、その点については今後の裁判例の集積を待つほかないといったところだと思います。

PS
 最後に一言。この判断は地方裁判所の判断ですので、今後もこの判断に従って判断されるという状況ではないですが、この裁判例の内容からすれば、取締役が損害賠償責任を負うことになる場合というのは、限定的にならざるを得ないと思います。
 この判断の当否は別として、取締役側に有利な判断だったと評価できると思います。

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