クライアントインタビュー/片桐和彦氏<その2>

「経営再建を果たした書店チェーンをM&Aで事業承継」をタイトルにお届けしている、株式会社住吉書房の前社長、片桐和彦氏のインタビュー記事の第2回です。
第1回はこちらからご覧ください。


●すべて自分でやるか、辞めるかの二者択一

――そういった中での、今回のM&A。引退を決めた理由は何でしょうか。

片桐 やはり、書店経営については「やり切った」という思いが出てきたからです。社長になってから17年間、それこそほぼ365日、朝昼晩と会社に出て、現場から上がってくる数字やメールをすべてチェックし、指示を出し続けてきました。これは性格的なものですが、すべて自分の目で見ないと判断ができないんです。もちろん、長期旅行には一度も行ったことがないですし、ちょっとした旅行に行ったとしても、会社の数字が気になって仕方がない。

現在54歳で、引退には早いと言われることもありますが、これまで働いた時間を足したら、一般的な定年年齢まで働くのと遜色ないくらいになっているのではないかと思ったわけです。

DSC_6037_2――オーナーとして残り、少しずつ権限を委譲するといった方法もあるかと思いますが。

片桐 私自身、店舗経験が長かったから分かるのですが、一番大変なのは、お店のスタッフなんです。だから、彼らから日々上がってくる様々な事案について、常に社長として判断を下し、即答できるかたちにしておきたい。そのためにはリアルな数字をいつも把握しておかなければならないし、それが維持できなくなるのであれば、スパっと辞めるべきだと考えました。オール・オア・ナッシング……すべてやるか、辞めるかというわけです。

この中途半端なことができないという性分は、今回の事業の引き続きでM&Aという選択肢を取った理由とも関係があります。これまで会社の数字については、すべて社長の私が見ていましたので、社内の誰かがパッと代わりを務めることができないという現実があります。であれば、書店経営の経験が豊富で、すぐに事業を引き継いでいただける大規模な他社さんに委ねるというのが、スタッフさんたちにとってもベストな道なのではないかと思ったのです。

――M&Aのタイミングとして今年(2015年)を選んだ理由は?

片桐 やっぱり経営環境の変化ですね。住吉書房も、社長を引き継いで最初の13年間はずっと伸び続けることができましたが、ここ4年間は苦戦が続きました。もちろん、以前も良いときと悪いときの繰り返しではありましたが、低迷期にも何かしら挽回の策はありましたし、実際にきっちりプラスに転じることができた。しかし、最近4年間は、何をやっても成果に結びつかない状況になってきたんです。

残るスタッフさんのことを考えると、経営が本当に厳しくなってから買い手を捜すのではなく、買いたいと言ってくれる先があるうちに、M&Aを実現させるべきだと判断したわけです。今年、手を挙げてくれた会社が、来年も同じように手を挙げてくれるとは限りません。常にリアルな数字を見てきたうえでの直感では、今年が「最後のチャンス」とも思ったくらいです。

クライアントインタビュー/片桐和彦氏<その3>に続きます。

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