CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)のMBO取得価格決定申立事件に関する決定下される

CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)のMBO取得価格決定申立事件に関する決定下される

 
4月13日、大阪地方裁判所は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、「CCC」と略します。)のMBOにおいて、強制取得された株式に関し公正な取得価格がいくらであるかにつき決定を出したそうです。
 決定は出されたのですが、未だ決定文を読んでおりませんので、この決定に関する雑感等はまた後日とさせていただき、今回はMBOの取得価格決定申立事件の構造がどのようなものかについて述べたいと思います。
 MBO(マネージメント・バイ・アウト)は、皆さんご存知のことと思いますが、大雑把に言えば、会社の経営陣が自己の会社の全部又は一部を買収することを指します。
 典型的なMBOでは、株式の非公開化と会社の所有(株主)と経営(経営陣)を一致させることが多いです。
 MBOの流れは、経営陣がつくったペーパーカンパニーが、まずTOBによって会社の株式の大部分を取得し、TOBによって取得できなかった株式については、全部取得条項付種類株式という制度を用いて強制的に取得します。
 具体的には、株主総会決議で、会社の発行済みの株式を「全部取得条項付種類株式」に性質を変更し、会社が取得条項を発動させ、現在発行済みの「全部取得条項付種類株式」を「新たに会社が発行する株式」に交換するのです。
ここでポイントとなるのが、①株主が保有している「全部取得条項付種類株式」の株数が「新たに会社が発行する株式」の1株に満たない株数にすぎない場合には、「新たに会社が発行する株式」を得ることができず、金銭のみしか取得できないという点と、②「全部取得条項付種類株式」と「新たに会社が発行する株式」との交換比率を会社が操作できるという点です。
 すなわち、仮にTOBで取得できなかった株式数が100だとすると、会社は、「全部取得条項付種類株式」101株と「新たに会社が発行する株式」1株とを交換するという交換比率を決定するのです。
これによって、「新たに会社が発行する株式」1株というのは「全部取得条項付種類株式」101株分に値し、101株の「全部取得条項付種類株式」を持っていない株主は、「新たに会社が発行する株式」1株すら得ることはできず、金銭のみしか取得できないことになるのです。
 このような交換比率にすることによって、TOBに参加しなかった残存株主が有する株式は、金銭を対価として会社等が買取り、残存株主は会社の株主としての地位を失うことになります。ここで残存株主だった者は、金銭しかもらえないのは仕方ないが、自分が保有していた株式の買取りの対価としてもらえる金銭が少なすぎる、もっと株式の価値は高いはずだと反論するわけです。
 この反論に基づき、残存株主だった者が裁判所に公正な買取価格を決めてくださいと申立てたことで争いとなるのが、MBOに関する取得価格決定申立事件であり、上記のCCCの事件もこの類型の争いです。
少々分かりにくかったかもしれませんが、このような構造で争いになっているのです。同様の争いは、レックス・ホールディングス事件、サンスター事件、サイバード事件が有名です。
 
PS 
最後に一言。最近、MBOを新聞等で見かける機会が多くなったと思います。MBOの浸透によって企業再編の選択肢が広がったことは確実でしょう。
しかし、上記のような争いの可能性があること以外にも、ファンドと手を組んで資金調達をしている場合には、ファンドからの意向や圧力がかかり、上場を廃止して経営の自由度を高めた意味が失われてしまう可能性も大いにあります。
MBOは、他の企業再編行為と比較すれば、発展途上であり、成熟しきっている手段ではないと思います。他の企業再編行為以上に十分な準備や検討が必要だということです。

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