【M&A】加速する「食品会社・M&A戦略」、日本の食糧政策に影響を及ぼすのか?

加速する「食品会社・M&A戦略」、日本の食糧政策に影響を及ぼすのか?

「今こそ、M&Aを活用した積極的な事業拡大戦略を」(2012.5.11)ではM&A関連の資金調達のトピックスを、「大手企業のM&Aから読み解く、今後の成長戦略」(2012.5.28)では飲料業界の国内市場の飽和・海外成長市場への進出とM&A戦略のトピックスをみてきました。この両者に関連し、そして深読みすれば、今や消費税増税の陰にすっかり隠れてしまったTPPにも関連しそうな話題……。

『食品大手がM&A(合併・買収)に向け、成長投資枠の設定・拡大を進めている。日清製粉グループ本社が2020年までに最大2000億円、食品商社の三菱食品が今後4年間で400億円の投資枠を新たに設定、ハウス食品などは枠を拡充した。国内市場の拡大が見込みにくいなか、潤沢な手元資金を新興国投資などに振り向ける。国内外で企業再編が相次ぎそうだ。』(日本経済新聞2012年6月12日朝刊)

日清製粉グループ本社の中期経営計画説明会資料『NNI-120、スピードと成長、拡大』(2012年2月17日付)によれば、近い将来の数値目標としてグループ売上高1兆円を掲げ、売上高1兆円達成時の海外売上高比率30%以上を目指すこととしています。
そして、2020年に向けて「M&A、アライアンスをスピード感をもって積極的に実行」することを基本戦略の一つに据えています。セグメント別では次のような戦略をとっています。
製粉事業においては「世界一の製粉会社」を目指し、既に2012年3月に全米9位の製粉会社であるMiller Milling社を122百万米ドル(約98億円)で買収し、先進国最大かつ成長市場である米国製粉市場へ進出し、北米市場で展開しているロジャー・フーズ社(カナダ・ブリティッシュコロンビア州)とのシナジー効果により事業拡大を加速する戦略です。
加工食品事業においては「中食・惣菜事業を主力事業に育てるべく、M&A・アライアンスを積極艇に推進」し、また、酵母・バイオ事業においては「バイオビジネスを主力事業に育てるべく、既存ビジネスを成長させるとともに、M&A・アライアンスを積極的に推進」するためにことに投資枠の一部が振り分けられることになるのでしょう。
そして、国内市場の成長が見込みにくいことから、海外事業については特にフォーカスされ、主に東南アジア、中国、北米において、製粉、ミックス、ベーカリー関連ビジネス中心にあらゆる機会を捉えて最優先で注力、社内組織の整備・強化、人員の重点配置を実行することを予定しています。

ところで、農林水産省の統計によれば日本の小麦の自給率は9%程度(平成22年度概算)とのことです。数年前には小麦をはじめとする穀物生産国の輸出停止政策、それに伴う価格高騰などの食糧危機があったことは記憶に新しいことだと思います。
それにも関わらず、日本の食糧政策の展望、TPP参加問題(特に農業分野において)など、『食』をとりまく問題は相変わらず不透明なままで、今後どのような方向に進んでいくのでしょうか。
企業戦略を構築する上で、国の食糧政策、世界的な食糧情勢にどう対応するかといった方向感は非常に重要な要素を占めているはずです。しかし、日本の政策(食糧戦略)は他国から遅れをとっている、非常に残念な状況にあると言われています。
決して、「国策事業」やら「官民挙げての」といった政策を求めるわけではないのですが、企業としてもベクトルを定めて欲しいというところではないでしょうか。

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