お昼休みの決算書講座
第六回 誰のための会計か?
前回までで一通り「決算書」と呼ばれる財務諸表を見てきました。決算書を作成するためには「会計」の考え方が必要になってきます。ところが「会計」というのは「誰のためにあるいは何のために決算書を作るのか」によって作り方や考え方が異なってきます。ですから、「会計」を考えるときにその目的を意識することはとても大切になります。
一般的に「会計」を目的別に分類すると「財務会計」・「税務会計」・「管理会計」に分類されています。この分類に従うと「財務会計」は株主や債権者のための会計、「税務会計」は税務署のための会計、「管理会計」は経営者のための会計ということになります。もう少し詳しく見てみましょう。
「財務会計(Financial Accounting)」は外部に対して報告するための会計で、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従って決算書を作成する会計です。「財務会計」では理解のしやすさと比較可能性が重要視されます。このため、統一基準に従って財務諸表を作成することが要求されます。統一基準を用いることで他の企業との比較や、前年あるいは前々年度との比較が可能となります。
「税務会計(Tax Accounting)」は税金を計算するための会計です。法人であれば法人税を計算するための会計で、法人税法の規定に従うことになります。「税務会計」では課税の公平と租税回避の防止という目的が重要視されています。このため、例えば引当金のように見積りによる損金計上は厳しく制限されます。具体的な計算は、「財務会計」で計算した利益に一定の加減算をして税務会計上の利益(課税所得といいます)を求めますので、通常両者には差異が生じます。
「管理会計(Managerial Accounting)」とは企業内部の業績を把握し、経営判断を行うための会計です。「管理会計」では経営意思決定のために必要な情報提供が重要視されます。また「財務会計」や「税務会計」のように過去情報のみならず、将来予測や経営計画といった未来情報も含みますので非常に幅広い概念になります。「管理会計」においては定められたルールは無く、各企業の経営者が経営していくために必要な情報を把握することが大切ですので、正確性よりも迅速性が大切になります。
○単一性の原則
企業会計原則では「株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために真実な表示をゆがめてはならない(一般原則七)」と規定されています。
これは上記のように各々の会計で目的は異なりますが、その元となる情報は「正規の簿記の原則」に従って作られた帳簿であるべきことが謳われています。企業を健全に発展させるためには正確な帳簿記録が必要ということなのでしょうね。
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