【お昼休みの決算書講座】第七回 時価会計について考えてみよう

「時価会計」とは資産や負債を期末時点の時価で評価して貸借対照表に反映させる会計制度のことをいいます。これに対応する概念として「取得原価主義会計」があります。「取得原価主義会計」とは資産や負債を取得価額で評価して、時価の変動を反映させない会計制度です。従来は全面的に「取得原価主義会計」が採用されていましたが、より財務諸表の透明性を高めるという目的のもと、「金融商品に関する会計基準」に時価会計が導入されています。これにより、従来、取得原価で評価していた有価証券等は時価評価を行うことになり、貸借対照表がより実態に近づくことになったものと考えられます。但し、現行の会計基準は全面的に時価会計を行うわけでなく、それぞれの資産の特性に応じて「取得原価主義会計」と「時価会計」を使い分けています。

それでは時価評価を行う資産・負債にはどのようなものがあるのでしょうか。「金融商品会計基準」では有価証券とデリバティブ取引について時価評価を求めています。但し、有価証券のうち満期保有目的の債権と関係会社株式については原則として取得原価で貸借対照表に計上することとされています。

つぎに時価評価を行った資産の評価差額の扱いについて考えてみましょう。有価証券の時価が変動した結果として、評価差額が生じることになります。ところが売却ないしは精算をしておらず、保有し続けている場合、損益は実現していないのではないかという問題が生じます。この点、売買目的有価証券とデリバティブ取引については評価差額を損益として認識しますが、その他有価証券の場合には損益として認識しません。売買目的有価証券やデリバティブ取引については、時価の変動により利益を得ることを目的として保有するため、時価の変動そのものを事業の成果と捉え、売却前であっても損益を認識することとされています。一方、その他有価証券は、時価の変動が直ちに損益に反映されるわけではなく、純資産の部に評価差額を計上することとしています。関係会社株式については事業に対する投資であるため、固定資産等と同様に原則として取得原価で貸借対照表に計上します。例外的に著しく価値が下落した場合には損益に反映させます。

☆「時価会計」が経済を停滞させる?

時価会計の導入当時、産業界からは反対の声が相次ぎました。また、「時価会計」が経済を停滞させるなどといった記事が新聞紙上を賑わした時期もありました。これは正しい理解がなされていなかったためと思われます。本稿で説明したように「時価会計」は部分的に採用されているだけですし、時価評価が企業の業績に直接的に影響するものは限られています。むしろ、企業側のリスク管理の観点からは資産や負債の時価を把握しておくことは大変重要なことと考えられます。また、投資家の側から見ても「時価会計」により企業の実態が見やすくなるものと考えられます。このような考えから、金融商品については全面的に時価を開示(注記)することとされています(金融商品の時価等の開示に関する適用指針)。

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